「建築界」の形成について

東京時代、留学時代、福岡時代などを横断的に回想し、また建築教育や建築家資格についての我流ではあるが若干のスタディから思うのだが、やはり「建築界」そのものを俎上にのせるべきではないか。自由職業人としての建築家が登場してからの建築界だけを考え…

転入のお知らせ

2007年より旧宅でつづけてきた拙ブログですが、半月の試行ののち、本日よりここに引っ越しました。ひきつづきよろしくお願いします。2019年5月1日 土居

近代建築が地域の誇りとなるには ----都城市民会館と大牟田市庁舎(地元紙記事)

大牟田市と都城市は近代建築の取り壊しをめぐってゆれている。両市の人口を足すと、フランスのナント市ほどになる。ナントは基幹産業が空洞化した斜陽化のなかで、建築遺産の再活用と企業誘致などの努力により、経済をV字回復させた模範都市とされている。…

『危機の都市史』吉川弘文館

とりまとめの初田香成さんから送っていただきました。ありがとうございます。 都市史を専門とする若手研究者の共同研究であり、多角的で高度な研究書である。そのたたき台となったのが、日本建築学会の都市史小委員会で若手研究者がおこなった共同研究であり…

中谷礼仁『未来のコミューン』

中谷礼仁さんからいただいた。ありがとうございます。 住宅とコミューンについて論考したこの書は、定番的なアプローチをとらず、著者自身の心の流れにまかせたような書き方と題材のならべかたになっている。だから学術書ではない。あくまで唯一無二の著者・…

後藤武『アナトール・ド・ボドーのシマン・アルメ建築生成に関する研究』

後藤武さんから博士論文が送られてきた。ありがとうございます。 ベトン・アルメ(鉄筋コンクリート)が一般的になるまえに考案された別の近代テクノロジーと、ヴィオレ=ル=デュクの建築思想をうけつぐド・ボドーについての研究である。19世紀フランスは…

辻泰岳『方法としてのディスプレー:国立近代美術館の会場設計について』

近美が竹橋に建設されるまえの京橋時代の、主要な特別展(企画展)の展示形式と内容を論じている。『文化資源学』に掲載されたものというが、読む機会があった。 「世界のポスター展」「日米抽象美術展」「現代の目:日本美術史から」「現代の目:アジアの美…

アンドレアス・グローテ『ゴシックの匠』

日曜の朝、さわやかに読んだ。ドイツ語初版1959、英語版1966、この日本語版2018。15世紀、ウィトルウィウス建築十書が再発見された。1548年のヴァルター・ライフによる『ドイツ語版ウィトルウィウス』の内容紹介とドイツ建築へのインパクトが紹介されててい…

啓蒙から野蛮へ---森美術館「建築の日本」展について

https://medium.com/kenchikutouron/%E5%95%93%E8%92%99%E3%81%8B%E3%82%89%E9%87%8E%E8%9B%AE%E3%81%B8-622fb9bb9af1日本建築学会HPの「建築討論」に拙論がアップされた。タイトルが古めかしいが内容からすればこんなものである。下書きにあったが自分でボ…

森美術館「建築の日本展」

日本の伝統建築と近現代150年とを相関させ、代表作100点以上を選んで9つの枠組で分類し、多くの模型を展示した充実した展覧会を、先日みてきた。 まずはざっくりの感想。 展覧会を本気で検討してみようと思えば、NY現代美術館における『近代建築』展(1932…

青木淳『フラジャイル・コンセプト』

青木さんからいただきました。ありがとうございます。 ぼくは、自分についてあまり自慢できるところはないのだけれど、青木さんと同年生まれであることはちょっとしたことである。ちなみに妹島和世とも同い年である。いつも青木論に余念がない花田佳明ともご…

ロバート・マッカーター『名建築は体験が9割』

エクスナレッジ様から送っていただきました。ありがとうございます。 すでに結論でもあるタイトルからすると、ソフトな、初学者のための本かなという印象であり、たしかに著者もそう心がけて書いているようである。しかしじつは、広く、深い。 マッカーター…

山本理顕『脱住宅』

3月初頭にはいただいていたので、遅いお礼となりましたが、ありがとうございます。 保田窪いらいの集合住宅プロジェクトの作品集でもあり、時系列でプロジェクトをみながら、専用住宅批判、1住宅=1家族批判を展開する。作品の歩みがそのまま理論の歩みに…

磯崎さんのおかげで文藝春秋デビュー?

磯崎アトリエから『文藝春秋』5月号が送られてきた。ありがとうございます。 なんのことかと思っていたら、「この人の月間日記」というコーナーがあり、今回は磯崎さんの「86歳で沖縄に移住した」である。磯崎さんの文章は、もちろん構築したものも魅力的だ…

アデル・ラインハルツ『ハリウッド映画と聖書』

訳者の栗原詩子さんから賜りました。ありがとうございます。原著は『聖書と映画』、2013年刊であり、表題どおりの内容である。訳文は平明で達者である。 世代的には『十戒』『ベン・ハー』『エデンの東』などが懐かしい(映画ではないが、ピーター・ポール・…

『磯崎新と藤森照信の「にわ」建築談義』

ずいぶんまえにいただいたのですが(ありがとうございます)、めまいの症状が続いていたので、そのあたりに置いたまま忘れていた。めまいがして病院で薬を処方してもらったりもした状況であった。 再録された論文にあるように、磯崎さんの「庭=海」論が全体…

学としての建築

昨日、日本建築学会の建築雑誌編集部ご一行様が研究室にこられた。「留学」について意見交換をした。同僚たちと取り組んでいる「環境設計グローバル・ハブ」を宣伝していいということなので、準備もした。「留学」はグローバル化時代の重要項目なのであるが…

伊藤公文『百書百冊』

伊藤公文さんから賜りました。ありがとうございます。 鹿島出版からの出版物における、書評集、エッセイ集である。高階秀爾(フォシオン『形の生命』)、伊藤ていじ(山本学治『素材と造型の歴史』)、桐敷真次郎(ギーディオン『機械化の文化史』)などの書…

豊川斎赫『丹下健三 ディテールの思考』

豊川さんから送っていただきました。ありがとうございます。 『ディテール』誌に掲載されたものをまとめたものであり、代々木体育館のサンスペンション構造はもちろん、東京カテドラルのHPシェル、山梨文化会館のジョイントコアなど、作品にそって特徴的な構…

沖縄移住?

磯崎さんが沖縄に移られた(る?)そうである。かねてからそういうプランであることは人づてに知っていたので驚きではなし、偉大すぎて、そういうライフスタイルを参考にするも、しないもない。・・・のではあるが。そこでいつもどおり、磯崎新という建築家…

豊川斎赫『丹下健三と都市』

豊川さんからいただきました。ありがとうございます。 丹下と都市というと、業界人なら読まずして内容を想像できるようなものなのだが、そしてじっさい、戦前の富士山都市計画から、戦前のオリンピック計画、神宮外苑計画、戦後の大阪万博などなど、網羅的に…

『明治の建築家 伊東忠太 オスマン帝国をゆく』

8月2日、ジラルデッリ青木美由紀さんのご講演である。同名の文献にもとづき、学生にも理解できるように解説していただいたものである。例の世界図式、すなわち古代系、西洋系、東洋系という3文明圏は世界旅行を契機として構想されたものだが、ラテンアメ…

岡村健太郎『「三陸津波」と集落再編』

岡村さんより送っていただきました。ありがとうございます。 都市復興をテーマとする研究には越沢明の一連のものがまず思い浮かぶが、本書はこの復興に新たな視座をもたらそうとしている。ひとことでいうと、越沢がどちらかというと大都市中心であったのにた…

ポルトガル建築の20世紀

トストエス先生の講演をきいた。中心と周縁というサブテーマもあったが、ほんとうのところは、建築写真をたくさん拝見したのは、目の快楽であった。やはりプロポーション、スケールの感覚がいい。ラテンだからとするのは簡単だが、そのラテン的特性はどこか…

『建築史とは何か?』アンドリュー・リーチ著、横手義洋訳

訳者の横手さんからいただきました。ありがとうございます。 原著は2010年刊、ヴェルフリン以降の近代における建築史学のレビューである。著者の歴史観、学史観、そして問題意識ははっきりしている。建築史を批判しつつ、前向きに構想している。読んで損はな…

有言実行、今年はこれをやる

(1)本をだす もう校正は済んだので、予定というか、ほぼ確定なのだが。久しぶりである。西洋建築史をテーマとして、比較的まとまった分量であり、考察もしている。三部構成である。まず西洋建築の古典的名著の翻訳。つぎにこの名著に触発された代表的な建…

2016年の記事一覧

2016.01.02 2016年元旦(エージェントの時代?) 2016.01.22 小嶋一浩+赤松佳珠子『背後にあるもの 先にあるもの』 2016.01.24 『建築画報』364(竹中工務店の免震構造デザイン) 2016.01.29 重松象平「建築的思考の可能性」 2016.02.13 卒業設計ジュリイ 2…

SD2016/1980年代生まれ論

鹿島建設から「SD2016」を送っていただきました。ありがとうございます。 鹿島賞《幼・老・食の堂》は、機能の混在した複合的な住居で、いまどきで面白い。20世紀の機能分化とはちがい、21世紀は、形態ではなく組成で都市を語るのであろう。いっぽうでビッグ…

マルグレイブ『近代建築理論全史』

丸善出版の企画・編集部よりおくっていただきました。ありがとうございます。 これは有名なWEB建築サイトで書評を書くことになったので、送られてきたものである。だから、いずれくわしく書くので、ここであれこれ論考するわけにもいかない。そこで建築「理…

石榑督和『戦後東京と闇市』

石榑督和さんからいただきました。ありがとうございます。闇市というと、焼跡闇市派といわれた野坂昭如『火垂の墓』とか、あるいはひとまわりか、ふたまわりの世代にとってはノスタルジーの対象であったりする、ぼくはそこまでなれないなあというような、微…