ポルトガル建築の20世紀

トストエス先生の講演をきいた。中心と周縁というサブテーマもあったが、ほんとうのところは、建築写真をたくさん拝見したのは、目の快楽であった。やはりプロポーション、スケールの感覚がいい。ラテンだからとするのは簡単だが、そのラテン的特性はどこからくるのか、知りたいところ。

それから周縁性ということでは、フィンランドにおけるアールトなどを思い出す。あるいはスペインではなくカタルニァのガウディなど。
トストエス先生のお題を拝借して、ヨーロッパ/アメリカ、中心/周縁、グローバル/国/地方という階層性、などの分析軸を複数念頭におき、それらのオーバーラップとしてポルトガル建築を分析することも考えた。

ごく少数のスターが地域を代表していることと、建築界のコンパクトさということ。フィンランドなどでは建築界は、ひとつのコミュニティという感じである。たぶんポルトガルもそんな感じなのであろう。そういう意味では、19世紀あたりから考えねばならない。都市化、産業革命ということだけではなく、建築産業、建築教育、建築家組織などが整備されるのが近代だが、あたりまえなので意識されないとがある。建築にかんするもろもろも社会制度を、固有の人々が縦断しているということである。つまり固有の建築関係者のつながり、つまり「建築界」である。それはあるていど分節化されてはいるが、連続的なつながりであり、ときに対立しても基本的には利益を共有している。建築メディアも、こうした「建築界」があってはじめて意味がある。たぶんラテンの世界は、建築界の内部も濃いのであろう。職能団体、アカデミア、運動といった輪郭のはっきりした対象は研究しやすいが、「建築界」は一種のクラウドであり、たしかに存在するが、つかみにくいときもある。