2015-01-01から1年間の記事一覧

この人を見よ(磯崎新建築論集8)

磯崎新は解体された建築と、不在となった主題にもかかわらず、デミウルゴスとして建築する。建築を制作するとも、建築を思索するともいえない。まさに「建築する」。ちょうどニーチェも、神の死と、ルサンチマンとしての信心にもかかわらず、超人ツァラトス…

宗教建築研究の新しい可能性

工学部一号館というところで、専門が近い研究者数名で話し合った。具体的には、19世紀の宗教建築は、建設や管理運営の主体が宗教団体ではなく、国や自立的な世俗アソシエーションであることがおおく、そのことの歴史的な意味をさぐろうという主旨であった…

廃墟論

工学部一号館で建築史の話し合いがおわったあと、隣の教室で人文系の先生方が廃墟論を論じていたので、小一時間聞いてきた。80年代の廃墟論のレビューであった。 コメントを求められたが、もう年寄りなのだからどうしようかとすこし躊躇し、手短なコメント…

日本建築学会の授賞式にて建築界を思う

金曜日は日帰りで建築会館にいってきた。 もうお役ご免なので書いていいのだが、ぼくごときが偉そうに、某賞選定委員会の委員長であったので、ご指示により出席した。多くの優秀な研究者や建築家たちが受賞したが、やはりこういう場は、晴れやかさが違う。受…

磯崎新『日本建築思想史』

著者様よりいただきました。ありがとうございます。 よくできた本で、かつての和様化論をバージョンアップさせ、25年周期の近代日本建築史の素描を提供している。 最近の著作を拝見していると、磯崎さんは自分語りをずっとしており、自分をアーカイブ化し…

山本理顕『権力の空間/空間の権力』

著者様よりいただきました。ありがとうございます。雑誌に連載された論文をまとめたものであり、このブログでもなんども紹介したから、こまかい解説は不要であろう。山本さんとはもともと接点はなかったが、石堂さんに彼の建築を案内していただいたことがご…

キャンパスめぐりの1日

総合大学なのでキャンパスがいくつかある。 いちども立ち寄ったことのないものもある。しかし今日は3キャンパスをハシゴした。 まずHキャンパスでは、委員会に出席してメモをとった。ここは移転作業が進んでおり、空がやけに広い。こちらに赴任したて、街…

福田晴虔著『ブルネッレスキ』『アルベルティ』『ブラマンテ』

(口上。これは学会誌に発表した書評の再録である。福田先生からもメールをいただいた。贔屓の引き倒しの部分については陳謝いたします。) 「私は自分自身を探究した」(ヘラクレイトス、断片一〇一) 福田晴虔先生の三部作『ブルネッレスキ』『アルベルテ…

虚構の時代はおわったか?

ひさしぶりに磯崎さんにお目にかかり刺激をうけましたという顛末である。 先日の丹下シンポジウムで、ぼくが冒頭に基調スピーチ的なことをすこししゃべり、磯崎さんが最後をまとめるというようなことであった。彼はパネラーたちのやや散漫な話題をうまくつな…

末光弘和+末光陽子『風のかたち 熱のかたち 建築のかたち』など

SUEP.1と2も送っていただきました。ありがとうございます。 《地中の棲処》の内覧会でお目にかかったはずで、このブログにも書いているはずだが、ずいぶんまえのことになってしまった。今では日本各地にプロジェクトを展開し、公共建築も手がけられて…

『危機に際しての都市の衰退と再生に関する国際比較』

日本建築学会の特別研究委員会から標記報告書を送っていただきました。ありがとうございます。建築史が専門の、40歳以下の先生方の、協同研究の成果でもある。 311が自然災害であるにとどまらず、戦後のエネルギー政策やら覇権国家依存体質などレジーム…

渡辺真弓『イタリア建築紀行』平凡社2015

渡辺先生よりいただきました。ありがとうございます。 パラディオについての主著を書き上げたあとの、肩の力の抜けた一冊である。サロンで紅茶をいただきながら、お話をうかがっている気がする。 イタリアの七都市とその建築についての大学講義的な解題、ゲ…

シンポジウム「丹下健三没10年『今、何故、丹下なのか』を問う」

日曜日に建築会館でお話ししてきた。サプライズ参加した磯崎さんが最後をまとめたこともあり、もりあがった。 パネラーごとにかなり多様な見解がだされた。結果論としては、3人組で討論するもいいが、各論の積み重ねでよかったのではないか、という気もする…

『豊饒の海』

ふと思うことがあって、三島由紀夫の遺作を数十年ぶりに読んでみた。 『豊饒の海』というストーリーは輪廻を枠組みとし、19年周期で、本多繁邦の19歳、38歳、57歳そして76歳を描いている。主人公は、死を見つめる。 「ふと」とは、金沢の近代日本建築展に…

不惑とは

論語では40歳のことだといいたいわけではない。そもそもぼくには手遅れである。丹下健三のことを考えているうちに、彼は42歳で広島ピースセンターを、43歳で香川県庁舎を竣工させている。すこし脱線すると三島由紀夫が自決したのが45歳である。数年…

TANGE BY TANGE 1949-1959

『丹下健三から見た丹下健三』がギャラ間で開催されている。加藤敏子さんが提供した、丹下健三個人蔵の自撮り建築写真であり、それをコンタクトプリントしたものが展示される。 図録は豊川斎赫さんの編集である。アーカイブの物質性がよく伝わってくるだけで…

プラトンの洞窟(東京カテドラル試論)

1月23日は出張にかこつけていろいろ観光した。 まず近現代建築資料館であるが、地下鉄からおりて湯島天満宮をながめながらアプローチするのが妙である。いわずもがな菊竹清訓展であるが、トレぺ図面、模型、スケッチ、動画など充実しており、これなら世界…

宗教的転回?

シャルリ・エブドへのテロ事件をみていると留学時代のことを思い出す。イラン=イラク戦争のさなかであり、フランス国内にまで革命派と旧体制派がいるという背景のなかで、親イラン派のテロリストがゴミ捨に、車中からなにくわぬ顔で爆弾をしかけ、たまたま…