うるの保育園

先週末、山を越えた内陸地帯に竣工したこの保育園をみにいった。建築家は研究室OG坂口舞である。二児の母でありながら、東京と福岡を往復しながら事務所経営をやっている。

保育園というのはひさしぶりに見学したのだが、少子化や制度改革のなかで、裾野の広い面白い分野であると実感。デザイン一般、アート、保健、教育などさまざまな分野と関連があり、子どもとはいえ全人教育なのだから、あらゆることはなんらかの関わりがある。さらに地域と関わりのある公共建築という側面もあるので、社会といかに関係づけるかという視点も大切である。園長先生も意欲的な方で、ヨーロッパにおける幼児研究のスタディ旅行などもしているらしい。

建物としては、小さい街としての建築というコンセプトのはっきりしたものである。さらに吹き抜けの階段室をおさめた塔が印象的である。

建築家坂口舞はフレキシブルで他人の意見をしっかり受け止められる点がいい。この保育園のような、さまざまな立場の関係者たちがかかわってくるプロジェクトにはふさわしい人材であろう。今のところほっこりキャラクターで売っている感がないわけではないが、しかし彼女はじつは芯の強い人であり、信念がある。キャリアをつめばそれがあらわれて、建築家としてのスケールも大きくなるであろう。

吹き抜け階段室は、もっと可能性を感じられるもので、階段の勾配をもっとゆるやかにして、そこで生活が展開される小ホールにすればさらに効果はあるだろう。ただ現状でも、小さい子どもたちに原風景や原体験を与えうるさりげなくシンボリックな空間になっていると思われる。そういう印象というものは、本人が自覚していなくとも、心に刻印されたまま一生残ったりするから重要である。