今年も文献をありがとうございました

年末になって本棚を整理していると、最近いただいたがそのまま不義理している文献がいくつかみつかった。

『ここに、建築は、可能か』(TOTO出版)、ありがとうございました。建築がソーシャルなものと再会したということだと思った。

『SD2013』、ありがとうございました。第32回SDレビューの発表とともに、歴史認識の議論があった。いまどきどうもとも思ったが、自分より若い世代が歴史のありかたをテーマ化しているのが軽い驚きというか、ぼくも年取ったなあ。まず建築家は、上の世代を超えるなどという構想はもっていなくて超世代的に仲がいいように見えるので時代は動かなさそう。建築史家は、職業としての建築史学に関心がいっていて、歴史観を構築するというオリエンテーションが弱そう。しばらくは低迷するのかなあ。

『創作談:渡辺純作品集』も、ありがとうございました。渡辺さんはぼくの同級生であった。アメリカで大学の先生をやったあと、日本に戻ってきて、こんどは中国語の作品集を出版である。住宅、福祉施設、公共施設、オフィスなどなまざまだが、牛舎っておもしろいだろうなという雑ぱくな感想をもった。過激に走らず抑制されたなかに芯の強さを感じさせる。

『建築と都市の歴史』井上書店、ありがとうございました。光井渉さんと太記祐一さんの共著である。おふたりともぼくと同じ研究室の出身で、いっしょに学会にいったこともあるので、なつかしいなあ。カラー写真が美しい。それだけでもグッドである。日本、西洋、近代の3部構成で、それぞれ12章だてというのが、大学の講義をしっかり意識されていて、さすがである。ただ今は国立大学は15週システムなので、プラス2回をカスタマイズして、1回は試験という考え方なのだろうか。たとえば万が一、ぼくのような西洋が専門の人間が、やむをえない事情で1年だけ日本建築史を講義するというような場合、むしろ16週(章)の構成で、そこからカスタマイズして14週にするといったほうがやりやすい。とはいえ幸いなことに、そのような特殊なことはなさそうだが。

『カラー版図説 建築の歴史』学芸出版社、ありがとうございました。西田雅嗣さんらの執筆である。見開きで1テーマであり、かつての学会編集のものを彷彿させる。作画者の氏名も記されており、労力と気合いの書である。

『TAKENAKA DESIGN WORKS』vol, 23, 24、ありがとうございました。22号は木質構造の特集で面白かったが、24号は学校教育である。かつて竹中工務店の社史をみたとき、宗教建築の章があっておもしろく拝見させていただいたことがあるが、テーマ性をもった社史を書くことができ、企業PRをこえたしっかりした建築史、建築論になるであろうという可能性を感じたことがあった。

CASABELLA、日土小学校の資料なども勉強させていただいているし、そのほか失念していたら申し訳ありませんが、ごひいきにしていただいてありがとうございました。

来年もよろしくお願いします。