小嶋一浩+赤松佳珠子『背後にあるもの 先にあるもの』

・・・を送っていただきました。ありがとうございます。

小嶋さんはずっとまえに石田さんが非常勤で呼んでいた時期があるが、ちょっと久しぶりである。

今回の本は、作品集よいうよりプロジェクト集である。個々の建築のコンプリートな記述ではなく、コンセプトとその展開と現実化ということでおさめている。小冊子としての出版社の方針もあるようだし、手軽なのだが、そのなかでエッセンスがおさえられているのは流石というべきか。

課題ごとにコンセプトをたちあげる従来からのやりかたであり、事前に普遍法則やタイポロジーを確立するわけでもない。個別事例のなかでコンセプトをたちあげる。それらコンセプトそれぞれは普遍性がありそうである。しかし建築家はつぎの機会に、前回の事例におけるそれに、それほど拘束されるわけでもない。

かつてアールヌーボーの建築家たちは、つぎの30年代の合理主義の時代になると、まったく作れなくなり、みずから筆を折ったりしたそうである。

そういう古典的な作家性ではない、21世紀の作家性というものがありそうである。

建築そのものよりも、建築が生み出す現象のほうをむしろ指標とする。それは建築の残像、反響、などというものに感覚を研ぎ澄ませるというようなことであろう。「先にあるもの」とはそのようなことも含むのかもしれない。