『明治神宮以前・以後』の書評

話題の文献である。某学会誌にその書評が掲載されていたので一読してみた。ぼくは厳密には専門外だが、妄想は与えてくれる。

神社建築様式と、社叢、都市計画的位置づけという大きな近代化の文脈では、明治神宮が画期をなすという流れで書かれており、また神宮の内苑・外苑という構成はそもそも宮城のそれに由来するなど、話題となっている外苑プロジェクトにもつながる重要な指摘がなされているそうである。

評者もまた明治神宮にかんする大著を刊行した学者であり、であるので、明治神宮を神社の歴史においてどこまで画期的かどうかについては、慎重な態度を示しているし、慎重であらねばならないという指摘をしている。

おそらく、論文集である本書は、リーダーである研究者がざまざまな研究者に呼びかけてとりまとめたものであるが、明治神宮決定論に同調する執筆者たちと、執筆はするが決定論には積極的に賛同できない執筆者たちの二派にわかれるということであろう。

特段の意見をもたない門外漢としては、そのような視点の多様性という前提で、読み解くことがよさそうである。

ぼくなりの興味を追記すると、日本の宗教政策は、政教分離など西洋からの圧力の結果であると漠然と思われているが、どうもそれは一方方向の過剰適応かもしれなくて、西洋近代こそその内部で、政治と教会、宗教と社会の葛藤があったのだから、真の比較はそのような葛藤と葛藤の比較であって、西洋モデルなどというものは日本的妄想であったと思ったほうがいい。このことは、どの宗派にどの建築様式がいちばんふさわしいということを、誰が、あるいはどの組織が決めるのかというようなことに近代性の足場があり、それがどうもきわめて多様なような気がする。

建築など空間にかんする研究については、本書でしめされたような研究水準、アーカイブ、方法論は、どの国でも適応可能であろうし、この水準で普遍化でき、その先には21世紀における宗教と建築の関係性というような大問題を論じることができるようになるかもしれない。

とはいえとりあえず目を通すべき文献かな?