ラブルースト展

今年度のシャイヨ宮の目玉はアンリ・ラブルースト(1801-1875)の展覧会のようで、10月11日にすでに開幕したが1月7日まで開催されるらしい。WEB版ル・モニトゥール誌にそのように紹介されていた。

 
古代建築を至上とするアカデミーで教育をうけ、23歳でローマ大賞を獲得したラブルーストは、造形的には古典主義の言語を忘れることはなかったが、「ロマン主義建築家のリーダー」らしく個人の創造性を信じるとともに、新しい建材、建築設備(暖房、照明)などに強い関心をしめしつつ、合理性、機能性をも追求した。サント=ジュヌヴィエーブ図書館、旧国立図書館には、構造の形式と、空間の形式が一致しており、その構文のなかに新素材としての鉄、新技術としての手元ランプなどが適切に位置づけられている。
 
 
展覧会ではフランス合理主義の原理を確立し、用途、文脈、構造を指標として建築を構築した建築家だと位置づけ、その影響下に、ジュリアン・ガデ、ギーディオン、ドミニク・ペローらを位置づけている。
 
 
こういう建築家を評価し歴史的に位置づけるにあたって、50年後に展開された近代建築運動の枠組みを遡及して(つまりモダニズムと称される基準をもって)判断することはできないであろう。むしろ空間のスケールなどは古代ローマ建築であり、それはボザールの背骨ともいえるもので、そのコアをラブルーストも継承している。しかし古代ローマ人こそ合理的であり、実用を考え、新しい技術をどん欲に取り入れたのであるから、19世紀中盤のフランス人建築家がそのようにすることに不思議はない。などと考えると、現代人と古典古代の関係のありようという視点から再考しても、多様な解釈があり得るのであって、それを唯一無二なる永遠の古典主義などとアプリオリに考える根拠もない。そのようなフレキシブルな目でラブルーストを再発見すればいいのではないか。