建築・遺産活用エリア(Avap)という新制度

これは従来の「建築的・都市的・景観的文化遺産保存区域(ZPPAUP)」にとってかわるものである。従来制度をはなはだ損ねるものではないが、持続可能な発展というものを組み合わせることで、バージョンアップされる。Avap(Aires de mise en valeur de l'architecture et du patrimoine)の定訳はないようで、建築・景観活用区域とする研究もあるようだが、ここでは「建築・遺産活用エリア」としたい。

2011年12月19日にまず「建築・遺産活用エリア(Avap)にかんするデクレ」が発令された。
2012年3月2日に、上記にかんする通達が、文化財局長から地域圏知事へなされた。Avapのための手引きのようなものらしい。

ル・モニトゥール誌WEB版の解説などによると、現行ZPPAUPは2015年7月14日(なぜか革命記念日)まで有効。つまり持続可能性にかんするGrenelle II法が制定されて5年後、という。建築・遺産という枠組みのなかに、さらに環境・持続可能性という軸がはいってきて、両立できるのかという懸念もあるというのではあるが。また現行ZPPAUPが新しいAvapとしてぞれ以前に承認されることはできる。しかしこの日までに新制度に再登録できないと、歴史的建造物の周辺地区とかはほぼ最初から再構築のようなことになるらしい。

もともと文化財保護の政策は、きわめて中央集権的に、国家主導的になされてきた。その権力がしだいに分権化され、地方圏知事などにすこしずつ委譲された。Avapはさらにコミューン(基礎自治体)の自律性を高める枠組みになっている。

地域ごとの建築や文化財の価値は、まさに地域の人がいちばん知っているだろうし、その活用もまた遠隔操作では問題があるであろう。だから1980年代以降の地方分権化のながれにそって建築・遺産活用も展開してゆくのであろう。ただうがった見方も知りたいのではあるが、教育・文化予算などは大幅削減の傾向のなかで状況は苦しいのではないかとは想像するのだが。